印刷業界の衰退

印刷業界の衰退

悲しいけれど、印刷した本というのは年々売り上げが落ち込んでいます。そして、売り上げが見込めなければ、残念ながら発行部数も減っていきます。ということは、印刷屋の仕事が減り、製本屋の仕事が減り…というお話が書かれています。

私の実家も印刷業

都内には、特に小型印刷業を営むおうちが多い地域があります。東京都のほぼど真ん中。山手線の楕円の中心あたりに位置する区です。読売ジャイアンツの本拠地があったりする区です。
この中でも、特に印刷業を営む家庭が多かった地域で生まれ育ちました。

普段は学校に行っているのですが、夏休みなどの長期休暇になるとよく分かる、実家の営業時間。朝は8時から、夜は不定でその日の仕事が終わるまで、という感じでした。
遅いと夜通し印刷機械が動いていることもあり、その機械の音の中で育ちました。なので私自身は、印刷機械の騒音は気になりません。

騒音よりもニオイがきつい

実は、印刷機械を洗浄するために、専用の溶剤を使うのですが、これがいわゆる「シンナー」のようなニオイがするのです。このニオイは今でも嫌いです。頭が痛くなってくるのです。

それでも、当時は鼻が慣れきってしまっていたのかもしれません。今よりは拒絶反応がなかったように思います。

地域で印刷屋が一件だけなら、地域住民から文句も出たのでしょうけど、幸い印刷屋が密集している地域でしたので、正直どの印刷工場からも同じような音とニオイが出ていました。なので、特段文句もなかったのでしょう。

ところが、今実家に帰ってみると、実家を含め印刷屋はほぼゼロです。悲しいです。

初めてのバイト

初めてアルバイトしたところは、印刷屋ではなく、広い意味での折り屋さんでした。
二つ折りの紙製ファイルを作ったり、カットしたハガキやチラシを、包装紙で包んでみたり。そんな軽作業のアルバイトです。
でも、それも時代の流れやらで、会社ごとなくなってしまいました。本当にさみしいです。

印刷業界の衰退の原因

ご存じかとは思いますが、そもそも紙の本が売れない時代です。まったく本が売れてないわけではないのです。そう、amazonをはじめとする、電子書籍に移行してしまったというのもあるのです。私自身、電子書籍の方が便利だと思うことも多々あります。現に、マンガなんかは電子書籍で買っていたりします。
ただ、電子書籍の場合は、それでも出版社への売り上げにはなっているので、まだ良いのですが、印刷屋の仕事が減ってしまうのは事実です。

それともう一つ。ブックオフなどの古本屋が増えてしまったことも問題です。本来、書店での売り上げがあったからこそ、出版社が潤い、それを元に新しい本の企画があり、印刷屋に仕事が降りてくるのです。
ところが、古本屋の売り上げは出版社の売り上げになりません。そのため、新しい本が作られなくなり、印刷屋の仕事も減ってしまい…という悪循環があるのです。同じ本が読み手とブックオフの間で循環してしまっているのです。
読み手は安く買えるし、古本屋もある程度儲かる、という図式はそう責められるものでもありませんが、印刷屋から嫌われているのは事実です。

地方に引っ越したというお話もありますが

広い意味での製本屋さん、音とかニオイの苦情があったり、仕事が減ったことで都内に居づらくなったりで、東京都下から埼玉方面に事業所を移しているという話もあります。
ただ、印刷屋や出版社が都内にあったりすれば、輸送コストがかかってきます。さらに今のガソリン価格の高騰もあり、輸送費は様々な方面のコストに直撃します。本当にきつい業界だと痛感できます。

本の出版数が減ると言うことは

本は、印刷してできあがりではありません。印刷されたばかりの紙は、A全版またはB全版と呼ばれる大きさのサイズの紙です。ピンとこないかもしれませんが、サイズについてはJIS規格の公式サイトに出ています。
ともかく、このサイズでは本になりません。ということは、適切なサイズに裁断(紙を切ることを裁断すると言い、専用の機械を裁断機と言います)し、決められた順に折ります。決められた順に折ると、16ページで1セットの、「折っただけの本」ができあがります。これを「折り丁」と呼びます。この折り丁をいつくか合わせて、最終的に製本を行います。これだけの作業が必要になるのです。
私、折り丁を作るところまでなら、すんなりとできますが、それは別のお話…。

本が売れない。ということは出版数が減る。ということは印刷する数自体が減る。
ということは、先に挙げた会社において、それぞれで仕事が減ってしまうと言うことです。単に印刷屋だけの問題ではありません。裁断する会社がつぶれ、折り専門業者がつぶれ、製本会社がつぶれ。印刷屋もつぶれます。

こうして、私の実家も印刷業をたたんでしまいました。
大きな出版社と専属の契約を結んでいたのですが、その出版社自体もかなり縮小しているようです。

本を読むということ

何もしなくても話が進むドラマや映画。それらを否定するつもりはありません。私自身も、映画もドラマも好きです。ただ、自発的に読み進めないと話が進まない「読書」という行動は、やはり積極的に行いたいと思います。若者の読解力が落ちているという話を、どこかで聞いたことがあると思いますが、活字離れというか読書離れが一因だと、私も思います。特に、小学生から中学生くらいまでの間に、様々な本に触れておくと、読解力うんぬんは置いておいても、知識を増やす面でお勧めなのです。
この本が良いとかではなく、面白そうだと思った本を読んでみるところから始めてみれば良いのです。小説、伝記、映画の原作、ドラマの原作、何でも良いのです。まずは読むことを初めて見ましょう。