インボイス制度っていったいなんなのさ

インボイス制度

前置き

自分の中で詳細に調べてはいますが、間違っていることを書いている可能性があります。
個人事業主の皆さまは、税務署などへ相談されるなどして、ご確認をお願いします。

このページの文章で何らかの被害を被ったとしても、私は責任を取れません。よろしくお願いします。

非常に読みにくい文章ですが、公正取引委員会のサイトにインボイス制度に関するQ&Aが記載されています。併せて目を通されてください。

そもそもなに?

インボイス制度とは、そもそも何なのでしょう。そして、いつから正式に始まるのでしょう?

インボイス制度の概要

適格請求書(インボイス)とは、
売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

インボイス制度とは、
<売手側>
売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
<買手側>
買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm)から抜粋引用

うん、わかりません。正直さっぱりです。

誤解を恐れずに簡単に言うと、ちゃんと消費税を払っているよ、とか払うよ、ということを示す制度です。正式には、「適格請求書等保存方式」です。やっぱりさっぱりわかりません。
この後、解説していきます。

いつから始まるの?

実はすでに始まっています。2022年現在は、移行期間という扱いです。2023年度から正式に開始となります。なので、この1年が最後の準備期間になります。「急に始めないでよ」はダメです。数年前から通達されていたので…。

対象は…?

一般企業はもちろんのこと、飲食店などを含む中小企業、自分のようなフリーランスを含む個人事業主まで、すべてが対象となります。大雑把に言えば、対象にならないのは、確定申告を行わないサラリーマンくらいです。

今までは免税事業者でした

免税事業者。個人事業主であれば、耳にしたことのある単語だと思います。

消費税では、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、その課税期間における課税資産の譲渡等について、納税義務が免除されます(注)。

(注)その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間(※)における課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間から課税事業者となります。なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。

国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm)から抜粋引用

これがまさに免税事業者を指します。つまり、課税売上高が1000万円以下の免税事業者であれば、消費税は納めなくて良い、と定義されています。今回インボイス制度で話題になっているのは、まさにこの部分なのです。

消費税は益税?

益税。これも個人事業主であれば一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。免税事業者であっても、請求書に「消費税」の欄を設け、原価の10%を記載し、総額に加算した上で請求していますよね。でも、免税事業者なので、その消費税はそのまま「ぽっけないない」ができるのです。いえ、今はできているのです。良いとか悪いではありません。正式に認められた免税事業者なのですから、何ら問題はありませんし、税務調査が入ることもありません。

益税とは、免税事業者がその請求先から受け取った消費税を、納税せずに合法的に手元に残すお金のことを言います。後ろめたい気持ちはありますが、合法手段です。

消費税の流れ

そもそも消費税の流れはどうなっているのでしょうか。
わかりやすいところで、あなた(消費者)がコンビニ(事業者)で買い物をする、ということを例にとって説明します。

  • 消費者から見ると
    • 原価100円の品物を買ったとします。
    • 税額は100 * 10%ですので、10円です。
    • コンビニ(事業者)に110円払います。
    • おしまい

とってもわかりやすいですね。というか、迷うところがありません。
でも事業者から見るとちょっと複雑です。

  • コンビニ(事業者)から見ると
    • 原価100円の品物を売った
    • 消費税10円を含む110円が支払われた

ここまではわかります。問題はここからです。
この10円の消費税、実はコンビニがまとめて国に納めているわけではありません。
この100円の品物は、卸業者がコンビニに卸します。この品物の原価を70円だとしましょう。この卸(コンビニから見れば仕入れ)にも消費税がかかります。1個仕入れるのに、コンビニは70円 + 消費税7円の77円を払っています。これを100円 + 消費税10円で売ります。
つまり、コンビニとしては売り上げ金額に含まれる消費税10円のうち、7円は卸業者に支払い済みなのです。
お客様から支払われた10円から卸業者に支払った7円を差し引いた差額の3円について、別途国に納めているのです。
この卸業者が免税事業者であれば、コンビニから受け取った77円のうち、消費税の7円は「ぽっけないない」できてしまうのです。

実は、我々個人事業主と仕事の発注元の間でも、まったく同じことが起きています。今までは免税事業者による保護があった上に、誰も問題視していなかっただけの話なのです。

国から見れば、「合法だけどさ、7円どこいった?」なわけです。認めてはいるけど、どうなんだろうね。ということで、この騒がれているインボイス制度につながるわけです。

インボイス制度が始まると

実は、やっかいなことになります。
先のコンビニの例で言えば、端的に言えば「卸業者が免税事業者ならば、コンビニが卸業者に払った消費税は、支払ったこととみなさない」となるのです。つまり、コンビニから見れば、「卸業者に消費税7円を払ったけど、免税事業者だから改めて国に10円の消費税を納めなければならない」となるのです。コンビニから見れば、卸業者への7円はただの無駄金になるのです。
お客さんからは消費税を10円しか受け取っていないのに、その中から

  • 卸業者に7円
  • 国に10円
  • 合計…17円の支払い義務
  • あれ?支払額が7円増えたぞっと

となってしまうのです。ただし、この卸業者が免税事業者でない場合は、この限りではありません。
卸業者への7円は、ちゃんと支払い済み消費税として認識されます。

コンビニは7円多く払い続ける必要があるのでしょうか…。
実は、卸業者から適格請求書が発行されていれば、その必要はありません。

適格請求書って?

この適格請求書が発行されているのであれば、コンビニは3円だけ納めれば良くなります。

さて、この適格請求書ですが…

適格請求書とは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、一定の事項
が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類をいいます。
※ 請求書や納品書、領収書、レシート等、その書類の名称は問いません。

国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf)から引用抜粋

だから、わかりませんってば。

端的に言えば、免税事業者の権利がある事業者であっても、その権利を放棄した上で、以下の要件を満たした請求書です。

  • 課税事業者に付与される「登録番号」
  • 適用税率
  • 適用税率ごとの消費税額

の3つが、請求書に記載されていなければなりません。
課税事業者に付与される登録番号、また新しい単語が出てきました。

登録番号とは、適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」(以下「登録申請書」といいます。)を提出し、税務署長の登録を受けた場合に事業者に通知される番号です。
また、登録番号は事業者へ通知されます。

国税庁(https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/about-toroku/index.html)から引用抜粋

よくわかりませんが、これは、ものすごく端的に言えば「売上額に関わらず、必ず消費税を納めます」という条件で発行される番号です。仮に売り上げが100万円しかなくても、仕入れ税額を差し引いたところからの消費税を支払わなければなりません。基本的に仕入れのないフリーランスのIT屋さんは、100万円の売り上げであれば、10万円の消費税が課されます。逃れられません。

じゃぁ免税事業者のままでいいじゃん

とはなりません。だって、コンビニの例で言えば、卸業者が複数あった場合に、A社は免税事業者、B社は適格請求書を発行する課税事業者だとしたら、好んでA社を使うでしょうか。A社を使うと7円多く払う必要があるのです。だったら課税事業者を使おう、ってなりますよね。当たり前ですよね。

フリーランスや個人事業主に当てはめましょう。あなた(Aさん)は免税事業者、お隣のBさんは課税事業者だとしたら、発注元は免税事業者のあなたに仕事を依頼するでしょうか。その消費税は払ったことと見なされないんですよ。だったらBさんに頼むじゃないですか。こういうことです。

ただ、AさんとBさんが、まったく同じスキルとは限りません。Aさんは免税事業者ではあるけれども、何十年にも及ぶ長い付き合いがある、とか、Aさんじゃないとできない仕事がある、とかいう限定的な状況であれば、Aさんは仕事がいただけるでしょう。

つまり、我々個人事業主としては、他の誰にも負けないスキルを手に入れるか、課税事業者になるしかないのです。じゃないと、他の課税事業者に仕事が流れてしまう可能性が高いのです。
まぁ、個人事業主全員が、10年後になっても、そろいもそろって免税事業者であれば、条件は同じですから変わらないかもしれませんね(その場合は、社内の正社員がアサインされるでしょうけど)。

これが、個人事業主が死んでしまうかもしれない、と言われる原因です。

どっちも地獄

個人事業主やフリーランスからすれば、取れる選択肢はどうあがいても以下の2つです

  • 免税事業者のまま
  • 課税事業者になる

免税事業者のままであれば、課税事業者に仕事を奪われてしまう可能性が高いのは前述の通りです。
課税事業者になったらなったで、売り上げが数百万円の事業者であれば、消費税を支払うことも難しいでしょう。

どっちを取るか、本当に悩ましい問題です。

フリーランスの業種ごとの負担

IT業や配送業であれば、仕入れという概念が存在しません。IT業であれば、せいぜい新しいPCやモデムなどでしょうか。回線使用料やスマホの料金などは、そもそも経費で落としているはずです。電気代も按分したりして、経費になっていますし、移動費(電車代など)も経費です。
黒ナンバーの配送業であっても、いいとこガソリン代と高速代、保険や車検、備品くらいですが、どれもまるっと経費です。やっぱり仕入れがありませんので、ほぼほぼ売り上げから経費差し引き後の10%が納税額になります。

他にも、仕入れがない業種であれば、売り上げから経費を差し引いた額の10%を払う必要があるのです。

仕入れがある業種はどうでしょうか。この場合は、適格請求書を発行する卸業者を選びましょう。そして卸業者はふるいにかけられないように、がんばって課税事業者になりましょう。

あれ?簡易課税制度?なんだ?

実は、インボイス制度が正式に始まった後でも事務負担を軽減を目的とした「簡易課税制度」というものがあります。

事業内容により、あらかじめ見なし仕入率を定めて、それに従うことで、事務負担を軽減してくれるのです。
事業区分と、該当する事業、その見なし仕入率は以下の通りです。

事業区分該当する事業見なし仕入率
第1種卸売業90%
第2種小売業、農林漁業(飲食料品)80%
第3種製造業、農林漁業(飲食料品を除く)等70%
第4種その他事業(飲食店業等)60%
第5種サービス業等50%
第6種不動産業40%
国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0022001-174.pdf)から引用抜粋

この簡易課税制度を利用すると、上記の仕入率に従って税額が算出されます。さらに、適格請求書の保存が不要になるのです。どっちにしろ、支払う必要があるというのは変わりませんが。

まとめると

インボイス制度とは、消費税にまつわる制度です。経過措置期間(2023年9月末まで)が過ぎてしまうと、どこかで誰かが消費税を払わなければならなくなるのです。

体力のない個人事業主にとっては、本当に厳しい話です。国は、「取引条件の見直しなどを行ってください」と言っていますが、どっかで誰かが払うという前提は変わりません。条件を見直したところで、税額が安くなることはありません。そして、その条件の見直しにおいて、国が間に入って調整してくれることも、当然ありません。

所得税は、売り上げが一定以下であれば無税になりますが、消費税は必ず発生する税です。本当にやっかいな話です。体力をつけて消費税を鼻で笑いながら払えるくらいになるしかなさそう…かな。